駒落ちの手合割と定跡

実力に差がある相手と指すとき、強い側が最初から駒を減らして指すのが駒落ちです。香落ちから十枚落ち、歩三兵・裸玉までの手合割を初形図で並べ、段級差との対応と、下手(したて・弱い側)がどう攻めればよいかを手順例つきでまとめました。

駒落ちの決まり

強い側を上手(うわて)、弱い側を下手(したて)と呼びます。駒を落とすのはいつも上手で、下手は平手と同じ20枚を並べます。落とした駒は対局が終わるまで盤に戻りません。

駒落ちでは上手が先に指します。振り駒はしません。棋譜では上手を△、下手を▲で書き、上手は平手の後手の位置に座るので、1手目は△から始まります。KIF形式の棋譜では、冒頭に「手合割:二枚落ち」のように手合が書かれます。

勝ち負けの決まりは平手と同じで、相手の玉を詰ませるか、相手が投了すれば勝ちです。二歩や打ち歩詰めなどの反則も平手と変わりません。

よく指されるのは香落ち・角落ち・飛車落ち・飛香落ち・二枚落ち・四枚落ち・六枚落ち・八枚落ち・十枚落ちです。そのあいだを埋める三枚落ち・五枚落ち・九枚落ちと、上手が玉だけで戦う歩三兵・裸玉もあります。同じ種類の駒を1枚だけ落とすときは、上手から見て左側の駒(盤面では1筋寄りの駒)を落とすのが習わしです。

このサイトのコンピュータ対局で手合割を選ぶと、ふつうはコンピュータが上手として先に指し、あなたが下手(▲)を持ちます。

手合割一覧(初形図)

各手合の初形です。上が上手、下が下手で、上手の陣から消えている駒が落とした駒です。右の列の評価値を見ると、角落ちと飛車落ちでほぼ歩4枚分、二枚落ちで8枚分、六枚落ちでは12枚分ほど下手が有利な計算になります。

評価値は、このサイトの検討エンジン(Fairy-Stockfish)に初形を1.5秒読ませた値で、下手から見たセンチポーン(歩1枚≒100)。平手の初形は先手から見て+48でした。手合の差の大きさをつかむための目安です。
手合割上手が落とす駒上手の駒初形の評価値
香落ち1一香19枚+81
右香落ち9一香19枚+34
角落ち2二角19枚+404
飛車落ち8二飛19枚+452
飛香落ち1一香・8二飛18枚+468
二枚落ち2二角・8二飛18枚+847
三枚落ち1一香・2二角・8二飛17枚+919
四枚落ち1一香・9一香・2二角・8二飛16枚+1015
五枚落ち1一香・2一桂・9一香・2二角・8二飛15枚+1153
六枚落ち1一香・2一桂・8一桂・9一香・2二角・8二飛14枚+1240
八枚落ち1一香・2一桂・3一銀・7一銀・8一桂・9一香・2二角・8二飛12枚+1635
九枚落ち1一香・2一桂・3一銀・4一金・7一銀・8一桂・9一香・2二角・8二飛11枚+1844
十枚落ち1一香・2一桂・3一銀・4一金・6一金・7一銀・8一桂・9一香・2二角・8二飛10枚+2085
歩三兵玉以外のすべて(歩3枚を持ち駒にする)玉・持ち駒の歩3枚+1611
裸玉玉以外のすべて1枚+2515

段級差と手合の目安

アマチュア同士では、段級位の差から手合を決める目安があります。級と段は続けて数え、たとえば1級と初段の差は1、3級と二段の差は4です。

段級位の差手合
0平手(振り駒)
1平手(下位者が先手)
2香落ち
3角落ち
4飛車落ち
5飛香落ち
6〜7二枚落ち
8〜9四枚落ち
10以上六枚落ち

江戸時代の家元制では駒落ちを偶数の段差に割り当て、1段差は平手と香落ちを交互に指す「平香交じり」のように、手合を組み合わせて差を埋めていました。現在のプロの公式戦はすべて平手で、駒落ちはプロの指導対局や将棋教室、アマチュアの大会の一部で指されています。

段級位そのものの仕組み(アマの級と段、プロの段位、レーティングとの関係)は段級位とレーティングの目安にまとめました。

香落ち・右香落ち

香落ちは上手が1一の香を落とします。上手の1筋は端の守りが歩1枚だけになり、下手が1筋の歩を突き越して香と一緒に攻めると受けにくくなります。右香落ちは反対側の9一を落とす手合で、香落ちより下手の得は小さめです(初形の評価値は香落ち+81、右香落ち+34)。

香1枚の差は序盤ではほとんど表に出ません。下手は平手と同じ戦法で指してかまわず、終盤で端に手が付けば香の差が生きます。逆に上手は1筋側に玉を囲いにくいので、玉の位置にも注意して見ておくと狙いが立てやすくなります。

この手合で対局香落ち・コンピュータが上手で先に指します

角落ち

上手の2二の角がない手合です。平手なら2二の角が上手の2筋と3三を守っていますが、角落ちではそこが薄く、下手の飛車先の歩交換や棒銀がそのまま通りやすくなります。

下手は飛車先の歩を伸ばし、▲2四歩と合わせて歩を交換するのが第一歩です。下手は上手の金銀が受けの形を整える前に、2筋・3筋で攻めの拠点を作るのが方針です。下手の角は上手から角交換を挑まれる心配がなく、遠くから利かせ続けられます。

この手合で対局角落ち・コンピュータが上手で先に指します

飛車落ち・飛香落ち

上手の8二の飛車がない手合です。上手は攻めの主役を欠くので、下手の玉はほとんど攻められません。下手は守りより攻めに手をかけてよく、代表的な作戦は飛車を4筋に回す右四間飛車で、飛車・銀・桂を4筋に集めて上手の4四・4三の地点を攻めます。

飛香落ちは飛車落ちからさらに1一の香を落とします。上手の受けが1筋でも薄くなるので、4筋の攻めに端攻めを組み合わせると上手は両方を受けきれません。初形の評価値は飛車落ち+452、飛香落ち+468と、角落ち(+404)より少し大きい差です。

この手合で対局飛車落ち・コンピュータが上手で先に指します

二枚落ち(飛車・角を落とす)

大駒を2枚とも落とす二枚落ちは、指導対局でよく指される手合です。上手は金銀4枚と桂香で守り、△5四歩・△5三銀と中央を厚くして待ちます。下手が攻めを急ぎすぎると、上手は持ち駒にした駒を打って反撃してきます。

下手の代表的な作戦は2つあります。二歩突っ切りは飛車を3八に回す袖飛車で、右の銀を3七から4六、3五へと進め、▲4四歩から上手の5三銀の周りを攻めます。玉は▲6八銀などでカニ囲いに組む程度で十分です。銀多伝は金と銀2枚を縦に並べる多伝の形で中央を厚くし、中飛車から▲5五歩で歩を交換して攻めます。

下の手順例は、二歩突っ切りの駒組みを▲4六銀まで進めたところです。このあと▲3五歩や▲3五銀で3筋の攻めの拠点を作ります。

12手目/ 12手▲4六銀

手順例です。下手の指し手は本文の作戦どおり、上手の応手は 駒落ちでよく見る上手の駒組み(△6二銀・△5四歩・△4二銀・△5三銀・△3二金・△5二玉)。定跡書の本手順とは手順や上手の構えが異なります。

この手合で対局二枚落ち・コンピュータが上手で先に指します

三枚落ち・四枚落ち

四枚落ちは二枚落ちからさらに両方の香を落とします。上手の1筋・9筋には端を守る香がないので、下手は棒銀で銀を2六まで進め、1筋の歩を突き越して端から攻めるのが分かりやすい方針です。三枚落ちは香を1一の1枚だけ落とす中間の手合です。

手順例では、下手は▲2六歩・▲2五歩・▲3八銀・▲2七銀・▲2六銀と棒銀に組み、▲1六歩から▲1五歩と端を攻めます。上手は2一の桂を3三に跳ねて受けに回りますが、香のいない1筋は止まらず、22手目の▲1三歩成でと金ができました。下手の1九の香が1筋の後ろ盾になっています。

22手目/ 22手▲1三歩成

手順例です。下手の指し手は本文の作戦どおり、上手の応手は このサイトの検討エンジン(Fairy-Stockfish)が選んだ手。定跡書の本手順とは手順や上手の構えが異なります。

この手合で対局四枚落ち・コンピュータが上手で先に指します

五枚落ち・六枚落ち(端攻め)

六枚落ちは、上手が飛車・角・香2枚・桂2枚を落とし、玉と金銀4枚、歩9枚で戦います。上手の1筋・9筋には端を守る駒がまったくないので、下手は9筋攻め(または反対側の1筋攻め)で、端に飛車・角・香を集めて突破するのが定番です。五枚落ちは六枚落ちより8一の桂が1枚多い手合です。

手順例では、下手は▲9六歩・▲9五歩と端の歩を伸ばし、▲7七角で角道を開けたあと▲9八飛と飛車を端に回します。▲9四歩と突き捨てて△同歩▲同飛と飛車が浮き、上手は△9二歩と受けました。そこで16手目▲5四飛と横に走り、上手の5筋の歩を取りました。大駒のない上手は、浮いた飛車を簡単には追い払えません。

実戦では▲9三歩などで端を崩してから、と金や成香を作って上手陣に入る形を目指します。

16手目/ 16手▲5四飛

手順例です。下手の指し手は本文の作戦どおり、上手の応手は このサイトの検討エンジン(Fairy-Stockfish)が選んだ手。定跡書の本手順とは手順や上手の構えが異なります。

この手合で対局六枚落ち・コンピュータが上手で先に指します

八枚落ち・九枚落ち

八枚落ちは上手が金2枚と玉だけで戦う手合です。上手の駒は金・玉と歩しかないので、下手は飛車先の歩を伸ばして▲2四歩と突き、歩を交換して飛車を2四に出すだけで攻めの形ができます。

手順例では、△2二歩と受けさせたあと▲7六歩で角道を開け、▲5五角から▲7三角成と、上手の金が届かない側で馬を作りました。上手は2筋と7筋の両方を同時には守れません。九枚落ちは上手の金が6一の1枚だけになり、さらに守りが薄くなります。

14手目/ 14手▲7三角成

手順例です。下手の指し手は本文の作戦どおり、上手の応手は このサイトの検討エンジン(Fairy-Stockfish)が選んだ手。定跡書の本手順とは手順や上手の構えが異なります。

この手合で対局八枚落ち・コンピュータが上手で先に指します

十枚落ち・歩三兵・裸玉

十枚落ちは上手が玉と歩9枚だけで戦います。下手は大駒で歩の裏に回り込めばすぐに成れるので、飛車先の歩交換から▲2三歩や▲2四飛の形で成り込みを狙うのが近道です。成った竜と馬で上手玉を追い、金銀は詰ますときまで取っておくくらいで勝てます。

歩三兵は上手が玉だけを盤に置き、歩3枚を持ち駒にして始めます。打った歩で下手の駒の頭を叩いてくるので、下手は大駒をむやみに前へ出さないことが大切です。裸玉は上手が玉1枚だけという極端な手合で、初形の評価値は+2515と最大ですが、玉を追う順序を誤ると逃げ道を作ってしまいます。どちらも、詰将棋で鍛えた「玉を包む」寄せの練習になります。

この手合で対局十枚落ち・コンピュータが上手で先に指します

駒落ちで上達する順番

駒落ちは、落とす駒の多い手合から順に勝ち越して、手合を一段ずつ平手に近づけていくのが昔ながらの上達法です。

  1. 六枚落ち・八枚落ち:飛車と角の使い方、端攻め、と金の作り方を覚えます。
  2. 四枚落ち:棒銀と端攻めの組み合わせ。上手の桂の反撃を受けながら攻める練習です。
  3. 二枚落ち:二歩突っ切りか銀多伝のどちらかを1つ覚え、最後まで指し切ります。
  4. 飛車落ち・角落ち:上手にも大駒があり、平手に近い攻め合いになります。右四間飛車や棒銀を平手でも使える形で覚えましょう。

コンピュータ対局ではレベルと手合割を自由に組み合わせられます。勝てるようになったらレベルを上げるか、落とす駒を減らしてください。終盤の寄せは詰将棋と手筋集、序盤の形は戦法ガイドの棒銀・右四間飛車が参考になります。

よくある質問

駒落ちではどちらが先に指しますか?

駒を落とした上手が先に指します。振り駒はしません。棋譜では上手を△、下手を▲で書き、1手目は△です。

香落ちではどちらの香を落としますか?

上手から見て左側、盤面では1一の香を落とします。9一の香を落とす手合は右香落ちと呼びます。

二枚落ちで下手が覚える定跡は何がよいですか?

代表的なのは、飛車を3八に回して銀を3五に進める二歩突っ切りと、金銀を縦に並べて中飛車で戦う銀多伝です。どちらか1つを最後まで指し切れるようにすると、平手にも通じる攻めの形が身につきます。

段級位の差がいくつなら二枚落ちですか?

アマチュアの目安では6〜7の差が二枚落ちです。1の差は平手で下位者が先手、2で香落ち、3で角落ち、4で飛車落ち、5で飛香落ち、8〜9で四枚落ち、10以上で六枚落ちとされています。

駒落ちの対局をこのサイトで試せますか?

できます。コンピュータ対局の手合割で香落ちから裸玉までを選べ、コンピュータが上手として先に指します。このページの「この手合で対局」から始めると、その手合が選ばれた状態で開きます。

参考資料

最終更新: 2026-10-17