タイトル戦(八大タイトル)

プロ棋士の最高の舞台が、8つのタイトル戦です。それぞれ主催する新聞社や企業、持ち時間、挑戦者の決め方が違います。仕組みを知っておくと、中継やニュースがぐっと分かりやすくなります。

タイトル戦とは

タイトル戦は、前年の勝者(タイトル保持者)に、予選を勝ち抜いた挑戦者が番勝負で挑む形式の棋戦です。七番勝負なら先に4勝、五番勝負なら先に3勝したほうがタイトルを手にします。

現在のタイトルは竜王・名人・叡王・王位・王座・棋聖・棋王・王将の8つです。日本将棋連盟の公式な並び(序列)は竜王と名人が最上位で、その後に叡王・王位・王座・棋聖・棋王・王将が続きます。複数のタイトルを持つ棋士は、序列が最も高いタイトルで呼ばれます(例:竜王と名人を持っていれば「竜王・名人」)。

どの棋戦も日本将棋連盟が共催。王将戦は第75期から日本将棋連盟の単独主催です。
タイトル主催タイトル戦になった年番勝負持ち時間(1人)
竜王読売新聞社1988年七番勝負(2日制)8時間
名人毎日新聞社・朝日新聞社1935年(実力制)七番勝負(2日制)9時間
叡王不二家2017年(棋戦は2015年)五番勝負4時間
王位新聞三社連合1960年七番勝負(2日制)8時間
王座日本経済新聞社1983年(棋戦は1953年)五番勝負5時間
棋聖産経新聞社1962年五番勝負4時間
棋王共同通信社1975年(棋戦は1974年)五番勝負4時間
王将日本将棋連盟1951年(棋戦は1950年)七番勝負(2日制)8時間

2日制の対局では、1日目の終わりに手番の棋士が次の手を紙に書いて封筒に入れる封じ手を行い、2日目の朝にその手から再開します。

8つのタイトル

  • 竜王戦 りゅうおうせん

    主催
    読売新聞社
    創設
    1988年(十段戦を引き継ぐ)
    番勝負
    七番勝負・2日制・持ち時間各8時間
    時期
    例年10月〜12月
    永世竜王
    連続5期または通算7期

    予選は竜王ランキング戦で、1組から6組までの組に分かれたトーナメントです。組ごとの上位者計11人が決勝トーナメントに進み、最後は三番勝負で挑戦者を決めます。棋士だけでなく女流棋士・奨励会員・アマチュアにも出場枠があります。

    優勝賞金は4,400万円(日本将棋連盟公表)で、将棋界で最も高額です。初代竜王は島朗。

  • 名人戦 めいじんせん

    主催
    毎日新聞社・朝日新聞社
    創設
    1935年に実力制が始まり、1937年に木村義雄が初の実力制名人
    番勝負
    七番勝負・2日制・持ち時間各9時間
    時期
    例年4月〜6月
    永世名人
    通算5期

    挑戦者は1年かけて行われる順位戦で決まります。順位戦はA級・B級1組・B級2組・C級1組・C級2組の5クラスのリーグ戦で、A級の1位が名人に挑戦します。名人に挑戦できるのはA級棋士だけで、名人になるには最短でもC級2組から5年かかります。

    名人の歴史は江戸時代の大橋宗桂(一世名人)までさかのぼり、八大タイトルの中で最も古い称号です。

  • 叡王戦 えいおうせん

    主催
    不二家
    創設
    2015年(2017年の第3期からタイトル戦)
    番勝負
    五番勝負・持ち時間各4時間(チェスクロック、秒読み60秒)
    時期
    例年4月〜6月
    永世叡王
    通算5期(資格者はまだいません)

    最も新しいタイトルです。段位別予選(四段・五段…と段位ごとに分かれた予選)を勝ち抜いた棋士とシード棋士で本戦トーナメントを行い、挑戦者を決めます。第1〜5期はドワンゴ、第6期から不二家が主催しています。

  • 王位戦 おういせん

    主催
    新聞三社連合(北海道新聞・中日新聞・西日本新聞)ほか
    創設
    1960年
    番勝負
    七番勝負・2日制・持ち時間各8時間
    時期
    例年7月〜9月
    永世王位
    連続5期または通算10期

    予選トーナメントの勝者12人が、紅組・白組の6人ずつに分かれて挑戦者決定リーグを戦い、両組の優勝者が挑戦者決定戦を指します。夏の2日制の七番勝負は、各地の旅館やホテルを舞台に行われます。

  • 王座戦 おうざせん

    主催
    日本経済新聞社
    創設
    1953年(1983年の第31期からタイトル戦)
    番勝負
    五番勝負・持ち時間各5時間(チェスクロック)
    時期
    例年9月〜10月
    名誉王座
    連続5期または通算10期

    一次予選・二次予選を経て、シード棋士を加えた16人の挑戦者決定トーナメントで挑戦者を決めます。予選から番勝負まで持ち時間が5時間で統一されているのが特徴です。永世称号は「名誉王座」と呼ばれます。

  • 棋聖戦 きせいせん

    主催
    産経新聞社
    創設
    1962年
    番勝負
    五番勝負・持ち時間各4時間
    時期
    例年6月〜7月
    永世棋聖
    通算5期

    名前は江戸時代の天野宗歩が「棋聖」と呼ばれたことに由来します。1994年の第65期までは年2回開催されていました。一次予選・二次予選・決勝トーナメントで挑戦者を決めます。第96期(2025年)から優勝賞金が大きく引き上げられました。

  • 棋王戦 きおうせん

    主催
    共同通信社
    創設
    1974年(1975年からタイトル戦)
    番勝負
    五番勝負・持ち時間各4時間
    時期
    例年2月〜3月
    永世棋王
    連続5期のみ

    挑戦者決定トーナメントは、ベスト4から2敗しないと敗退しない敗者復活の仕組みがあります。挑戦者決定戦は変則二番勝負で、勝者組の棋士は1勝、敗者復活組の棋士は2連勝が必要です。永世棋王の条件は「連続5期」だけで、八大タイトルの永世称号の中で最も厳しいと言われます。

  • 王将戦 おうしょうせん

    主催
    日本将棋連盟(特別協賛 ALSOK)
    創設
    1950年(1951年からタイトル戦)
    番勝負
    七番勝負・2日制・持ち時間各8時間
    時期
    例年1月〜3月
    永世王将
    通算10期

    一次予選・二次予選を勝ち抜いた3人とシード4人の計7人による挑戦者決定リーグで挑戦者を決めます。初期には、3勝差がつくと駒落ちで指す「指し込み制」がありました。第74期までは毎日新聞社とスポーツニッポン新聞社の主催でした。

タイトル保持者(2026年10月17日時点)

日本将棋連盟「棋戦一覧」で2026年10月17日に確認。進行中の竜王戦・王座戦の結果で変わります。
タイトル保持者最近の獲得・防衛2026年10月17日の状況
竜王藤井聡太第38期(2025年11月)防衛、5連覇第39期七番勝負が進行中(藤井竜王が1勝0敗)
名人藤井聡太第84期(2026年5月)防衛第85期順位戦が進行中
叡王伊藤匠第11期(2026年5月)防衛第12期予選が進行中
王位藤井聡太第67期(2026年9月)防衛第68期予選が進行中
王座伊藤匠第73期(2025年10月)に藤井から奪取第74期五番勝負が進行中(広瀬章人九段と2勝2敗、第5局は10月27日)
棋聖藤井聡太第97期(2026年7月)防衛第98期予選が進行中
棋王藤井聡太第51期(2026年3月)防衛第52期挑戦者決定トーナメントが進行中
王将藤井聡太第75期(2026年3月)防衛第76期挑戦者決定リーグが進行中

2026年10月17日時点で、藤井聡太が竜王・名人・王位・棋聖・棋王・王将の六冠、伊藤匠が叡王・王座の二冠を保持しています。藤井は2023年10月に八冠を達成しましたが、2024年に叡王、2025年に王座を伊藤に奪われました。

永世称号

同じタイトルを一定の期数獲得すると、そのタイトルの永世称号(王座は名誉王座)の資格を得ます。称号を名乗るのは原則として引退後ですが、60歳以降は現役のまま名乗ることもできます。

2026年10月17日時点。永世叡王の条件は日本将棋連盟の規定ページで確認できなかったため、Wikipediaの記載によります。
称号条件資格を得た棋士
永世竜王連続5期または通算7期渡辺明、羽生善治、藤井聡太
永世名人通算5期木村義雄(十四世)、大山康晴(十五世)、中原誠(十六世)、谷川浩司(十七世)、森内俊之(十八世)、羽生善治(十九世)
永世叡王通算5期なし
永世王位連続5期または通算10期大山康晴、中原誠、羽生善治、藤井聡太
名誉王座連続5期または通算10期中原誠、羽生善治
永世棋聖通算5期大山康晴、中原誠、米長邦雄、羽生善治、佐藤康光、藤井聡太
永世棋王連続5期羽生善治、渡辺明
永世王将通算10期大山康晴、羽生善治

羽生善治は2017年12月、当時の7つのタイトルすべてで永世称号の資格を得て、史上ただ一人の永世七冠になりました。藤井聡太は永世棋聖・永世王位・永世竜王の3つの資格を持っています。

段位と棋士になるまで

タイトル戦に出られる「棋士」は、四段以上のプロのことです。棋士になるには、日本将棋連盟の養成機関である新進棋士奨励会に入り、6級から三段まで昇級・昇段していきます。奨励会の6級でも、アマチュアの三〜四段くらいの実力があるとされます。

  • 三段リーグ: 三段の奨励会員が半年ごと(4〜9月、10〜3月)に1人18局ほどを戦い、上位2人が四段に昇段します。プロになれるのは基本的に年4人です。
  • 年齢制限: 21歳の誕生日までに初段、26歳の誕生日を含むリーグ終了までに四段になれなければ退会です。最後のリーグで勝ち越せば延長でき、29歳まで続けられます。
  • 編入試験: アマチュアや女流棋士が公式戦で好成績(最も良い10勝以上の区間で勝率6割5分以上など)を挙げると、棋士との五番勝負の編入試験を受けられ、3勝すれば四段になれます。

四段からは、順位戦のクラス、竜王戦の組、タイトルの獲得、公式戦の勝ち数などで九段まで昇段します。たとえば四段から五段へは公式戦100勝、七段から八段へは順位戦A級への昇級かタイトル2期、八段から九段へは名人1期かタイトル3期などが条件の一つです。

アマチュアの段級位

アマチュアの段級位は、10級から1級までが級位、初段からが段位です。日本将棋連盟は、段位の免状(会長・名人・竜王の署名入り)を発行していて、通常の最高は六段です。認定問題、道場の成績、指定大会の成績のほか、将棋ウォーズや81Dojoなど連盟が認めたネット将棋の段位でも申請できます。

女流タイトル

女流棋士のタイトル戦も8つあります。白玲(2020年創設)、清麗(2019年)、女王(2007年)、女流王座(2011年)、女流名人(1974年)、女流王位(1989年)、女流王将(1978年)、倉敷藤花(1993年)です。最も古い女流名人戦は、女流棋士制度ができた1974年に始まりました。

2025年に、白玲を通算5期獲得した女流棋士は棋士(四段)になる資格を得られる規定ができ、2026年10月に西山朋佳が初めてこの資格を得ました。

よくある質問

タイトル戦で一番格が高いのはどれですか?

日本将棋連盟の序列では竜王と名人が最上位です。賞金が公表されている中では竜王戦の優勝賞金4,400万円が最も高額です。

名人戦にはどうすれば出られますか?

順位戦に参加し、最下位のC級2組から1年に1クラスずつ昇級してA級に上がり、A級で1位になると名人に挑戦できます。最短でも四段になってから5年かかります。

2日制の対局で、1日目の夜はどうなりますか?

1日目の終わりに手番の棋士が次の一手を紙に書いて封をする「封じ手」を行います。2日目の朝に立会人が封筒を開け、その手から対局を再開します。

永世称号はいつから名乗れますか?

原則として引退後です。ただし60歳を過ぎれば、本人の希望で現役のまま名乗ることもできます。

参考資料

最終更新: 2026-10-17